2017年04月03日

晴れて気持ちのいい今日は、昼からN寺ムササビたちのお宅をチェックに出かけてきました。
駐車場に着くなり、造園のおじさんが遠くから手を降ってくれます。

「今日は休みか〜?」

「うーん!ムササビたちに子供が産まれているか、みーにーきーたーよ〜!」

これだけでおじさんたちは私が何を始めるのか分かってくれています。

「お墓に、ニホンミツバチいるぞー!」

これは、養蜂家の魔法使いMさんに「知らせろ」の合図です。

「墓地に巣を作れば、苦情が出る前に殺虫剤をかけなければならない、ミツバチだって気の毒だ」

というおじさんの気持ちは本当に美しいと思います。
電話をして5分とたたない内にMさんが軽トラを飛ばしてやってきてくれました。
さすが魔法使い、明日の朝イチで作業に来てくれるそう。

さて巣箱のチェック。
境内の3つの巣箱はあるメスが縄張り内に治めているようで、いつも1箇所にしか入っていないのですが、今日は珍しく2箇所にムササビがいました。

駐車場
(おそらくこのムササビが新参者。駐車場巣にて)

起こしてしまいました、ごめんね!!
やっぱり夜に来ないと子供の確認は難しいようです。

山頂へ登ると、この時期日本へ渡って来るタカを観察していたカンちゃんと久しぶりの再会。
カンちゃんは私が小学校の頃から知っている近所の優しいお兄ちゃん。
先程まで私がムササビの食痕を探していた場所で、ふと羽を拾い上げました。

「フクロウの胸の羽だよ」

食痕ばかりを考えていたのか、全然気が付きませんでした。

「同じポイントなのに見ているものがそれぞれ違うんだね」

そう、これが多様性なのですよね。。。

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(今日見つけた食痕、コナラの春芽、この他マツグミもありました)

駐車場へ戻り車のエンジンをかけると、待っていたようにおじさんたちが小屋から顔を出しました。

「どうだったー子供!」

と言ったおじさんはいつもは「俺、動物興味ねぇもん」と言っています。それは子供の頃からさんざん飯能の自然に慣れ親しんだおじさんだからこその言葉なのは想像できます。
巣箱を掛けてからは、「今日はどこに入った?」「こないだ顔だしてたぞー」などと聞かせてくれます。

みんながみんな、自然に興味を持っていなくてもいいのです。
ただ、「この巣箱はあの人が思いを込めて掛けたものだから」とか「この巣木を伐ったらあの人が悲しむだろうな」と思ってくれるこの地元の人々、私にとっては、今日登場したこんな人々こそが、飯能の宝なのです。












 

2017年03月31日

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(青梅の森に棲むメスのムササビ、ブースカ)

1月10日に交尾が確認できたブースカ、ムササビの妊娠期間は74日とのことなので、出産予定日は3月25日前後だと予想していました。 

25日はいつものように日没後、外へ出かけていきました。
26日、雨が降っていました。ブースカは巣箱から一度、顔は出したものの出かける様子を見届けることはできませんでした。
27日、28日、30日、巣箱内に居ることは分かっていたのですが、とうとうブースカは顔も出さず終い。仕掛けてきたセンサーカメラにも出かける様子は写っていませんでした。

そして今日、ブースカの巣箱へ近づくと、中から声が聞こえてきます。

「くぅー、くぅくぅー」

アカガエルの繁殖期に聞こえるような声に似ています。

「チュバッ」という音も聞こえてきます。

けれどもすぐに聞こえなくなって、 1時間くらい待つとまた聞こえてきます。
ブースカは見事にお母さんになったのかもしれません。

音だけで想像するに、お乳をねだる「くぅー」という声、乳首を探して唇をならす「チュバ」という音なのではないかと、そんな気がしています。

今夜は雨、そして明日もまだ気温の低い夜が続きます。ブースカはまだ毛の生え揃っていない我が子を温め、授乳をし続けなければいけません。

雨が入り込まないだろうか、巣材は十分だろうか、ブースカはちゃんと栄養を蓄えることが出来ただろうか。
今日からは嬉しい心配事でそわそわの毎日になりそうです。 

2017年03月23日

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ついにシンポジウムが終わってしまいました。
1日目は東京都美術館での先生方の講演、2日目はアクアマリンふくしまでのエクスカーション、そして3日目には先生方とプライベートで猪苗代カワセミ水族館と、なんとも濃い3日間を過ごしてきました。

NHKの小林ディレクター、ニホンカワウソはもう絶滅してしまったこと、けれども韓国ではカワウソが復活していること、そしてそのカギを番組で伝えました。講演では番組を見た男の子から送られた手紙が紹介されました。

「ぼくはカワウソをたすけたいです。どうすればいいですか?おねがいします、おしえてください 。」


安藤先生はカワウソを助けられなかった多くの理由の中に「知識不足」「保護対策の欠落」を挙げていました。議論をし、合意を得て対策を確立させるまでには多くの時間がかかると。被害が目に見えてから議論を始めていてはもう間に合わないのです。


会場で配ったアンケート、なんと9割の方が何らかのコメントを書いてくださったそうです。一部だけでしたが私も読ませていただきました、その中にあったコメント。

「私も保全活動をしたいと思いました。それには何から始めればいいでしょうか。」

カワウソに限らず、保全というのは始めようと思って出来る種類のものではありません。ゴールがわからないまま始めればきっと飽きてしまうか、誰かに丸投げになってしまうかもしれません。
保全の本質、それは相手のことを好きになり、相手をよく知ることだと思うのです。

自治体がたくさんのお金を使ってもアライグマやハクビシンは減りません。多くの人は目の前にいるそのいきものがアライなのかタヌキなのかハクビなのかがわかりません。
小学校では「生態系」や「生物多様性」といった一番の基礎となるはずの教育が行われていません。

虫でも鳥でも魚でもいいのです、もちろんカワウソでも。たった1種だけでも本気で大好きになれるいきものを見つけてみてください。そしてそのいきものがどんなことをしたら悲しむか、どんなことをしたら喜ぶかを調べてみてください、そしてその環境を共有してください。
いつかきっと生物多様性の輪廻に沿って、必ず絶滅したニホンカワウソにたどり着けるはずです。

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(カワセミ水族館で暮らすチロル)


読んでいただきありがとうございました。